軟部外科シリーズ:脾臓摘出

こんにちは、獣医師の上野です。今回は脾臓摘出についてお話ししたいと思います。

脾臓とは

胃の隣にある靴べらのような平たい形の臓器です。

働き

・古い赤血球を破壊する

・新しい赤血球の生産(犬)・貯蔵する

・リンパ球や抗体を作る免疫器官

脾臓摘出が必要になるケース

・脾臓に腫瘤構造が確認される

・免疫疾患などで脾臓が腫れている

・脾臓が傷つき出血している

当院で遭遇する最も多いものは脾臓の腫瘍です。

脾臓の腫瘍

主に超音波検査やレントゲン検査での発見に至ります。

こちらは正常な脾臓です。

こちらの脾臓では腫瘤状構造が確認できます。

食欲不振や腹囲膨満などの一般状態の悪化で発見されることもありますが、自覚症状がなく健康診断等で発見されることもあります。

犬の脾臓の腫瘍では約50%で血管肉腫という悪性腫瘍の可能性が高いです。

血管肉腫は高悪性度で転移する可能性が高く、また、脾臓の破裂を招くこともある腫瘍です。

治療の第一選択は手術です。転移に対して抗がん剤治療を行うこともありますが、予後は悪いことが多く、非常に慎重な対応が必要になります。

猫では肥満細胞腫やリンパ腫が多いですが、摘出・補助治療により予後は良好であることが多いです。

悪性以外にも良性腫瘍や非腫瘍性であることも少なくないですが、悪性腫瘍との画像検査での鑑別は難しく、摘出後の病理組織検査で確定に至ります。

これらの画像は悪性でしょうか?良性でしょうか?答えは最後に記載します。

手術

脾臓は胃よりも尾側に位置し、右下腹部に向かって腹部正中を斜めに横断して存在します。

臍を中心とし、腹部の長さの約4~6割を正中切開します。

脾臓は胃から出ている大網という膜の一部である胃脾間膜により胃と繋がっており、その中には大小さまざまな血管が走行しています。

この間膜と血管を結紮(糸で縛ること)や電気メスや超音波メスでの焼烙により切断し、脾臓を摘出します。

手術の注意事項

脾臓に腫瘍が発生している場合、周囲の組織(主に大網)と癒着をおこしていることがありますので、丁寧に剥がし、視界を確保します。

また、腫瘍発生部位は非常に脆くなっています。

無理に脾臓を操作すると脾臓組織が破れてしまい、出血を引き起こす可能性が高い(脾臓は止血が難しい)ので、露出しにくい時は切開範囲を広げます。

脾頭部(脾臓の頭側部分)は胃に最も近く、胃と強固に連結しているため、無理に引き出さずに覗き込むようにして確認します。

胃脾間膜に走行している太い血管(主なものに脾動脈・静脈、短胃動脈・静脈)の損傷は大出血に繋がるため、確実に止血するために焼烙ではなく、結紮選択し、切断します。

脾臓を摘出した後に不整脈を生じることがありますので、摘出した後も油断は禁物です。

術後の注意事項

悪性腫瘍の場合、止血異常や貧血が発生することがあるので、術後は体調とともに血液検査でモニタリングを行います。

入院は状態にもよりますが、0~3日ほど様子を見ます。

術後の経過

転移の有無を確認するため、定期的(特に術後1〜3ヶ月)に超音波検査やレントゲン検査で経過観察をします。

良性腫瘍や非腫瘍性の場合は切除によって完治しますので、そこで治療終了となります。(免疫疾患の場合はその治療を継続)

答え合わせ

一つ目の写真:悪性腫瘍(リンパ腫)

二つ目の写真:非腫瘍性(脾血腫)

三つ目の写真:悪性腫瘍(未分化肉腫)

一つ目の写真は腫れてる所見でしたが、悪性腫瘍になります。

二つ目と三つ目の画像は同じように見えますが実は全く違う病態なんです。

そのため、早期発見が脾臓の腫瘍の明暗を分けると言っても過言ではありません。

何かご心配な点やご不明な点がございましたら気軽にご相談ください。