前回は『犬の慢性腎臓病』についてご案内しましたが、
今回は『ヒト臍帯を用いた幹細胞培養上清液の注射』による『犬の慢性肝炎の改善成績』について、
ご案内をいたします。
まず、以下の注意事項をお伝えさせてください。(前回掲載時と同じ内容になります。)
再生医療に関して、動物医療においては、歴史の浅い研究分野になります。
現段階では、その効果を保証することはできませんので、過度な期待には注意が必要と考えています。
あくまで、『こういう治療の選択肢もあるんだ』というご提案の1つとしてお伝えさせてください。
慢性肝炎の発症原因を解明することは難しいケースが多いですが、
昨年より治療の一環として行なっている当院での成績として、ご案内いたします。
『ヒト臍帯を用いた幹細胞培養上清液の注射』の投与方法と投与間隔について:定期的な投与が必要
1週間に1回、合計4回行います。
その後、2〜4週間に1回を繰り返し行い、投与開始から6ヶ月間を目安に1クールとしてご案内しています。
投与方法については、皮下点滴もしくは直接注射します。
当施設で実施した子に伴う有害事象について(副作用について):当院では有害事象なし
2024年5月までで当施設で実施した子については、有害事象は認められていませんが、
アレルギー症状に伴う発熱、嘔吐、下痢などに注意が必要と考えています。
慢性肝炎の治療として、内服薬での治療を実施していましたが、徐々に悪化を認めたため、
ヒト臍帯を用いた幹細胞培養上清液の注射を1週間に1回(合計2回)実施しました。
慢性肝炎の治療として、内服薬での治療を実施していましたが、徐々に悪化を認めたため、
ヒト臍帯を用いた幹細胞培養上清液の注射を1週間に1回(合計4回)実施しました。
その後、2週間に1回を4回、4週間に1回にて継続的な治療を実施しました。
今回ご紹介した子は、以前から慢性肝炎を認めており、継続的にお薬での治療を実施していました。
肝臓の状態が悪くなり、数値が高くなってきたため、再生医療を実施しています。
慢性肝炎の原因は、多岐に渡りますが、肝臓の数値が高い状態が続くことで、
肝不全(肝硬変、肝萎縮)状態へと進行していく恐れがあります。
その原因の精査には、血液検査だけではなく、
画像検査(超音波検査やレントゲン検査、CT検査)も必要です。
最終的に確定診断ができない場合には、開腹手術による肝臓生検の必要性もでてきます。
今回、ご案内した子は、その原因の精査をすべて実施しているわけではございません。
年齢とともに上がってきた肝臓の数値を、再生医療でサポートした場合の1つの結果になります。
慢性肝炎で悩んでいる子(なかなか数値が下がらない子など)の治療方法の1つに、
再生医療も検討していく価値はあると思います。
慢性肝炎でお悩みの皆様にとって、少しでもお役に立てればと思いますので、どうぞ検討してみてください。
再生医療の実施については、ご来院時にご説明しております。
再生医療のご質問については、ホームページの『お問い合わせ』よりメールにてお願いいたします。
日中業務については、診察・手術を行なっておりますので、お電話でのご説明ができない状況です。
ご協力、宜しくお願いいたします。
アリイ動物病院
院長 渡部寛之