消化器疾患シリーズ7:犬の胆泥症

今回は、高齢に伴い罹患率が高くなる『犬の胆泥症』について、ご紹介いたします。

胆嚢について

胆嚢は、肝臓から生成される胆汁を貯める袋状のものになります。

胆汁は、食べたものを消化する際に必要な消化液で、

食後に胆嚢から排出される必要不可欠なものになります。

胆泥症について

胆泥症は、高齢のわんちゃんの6割近くの子に認められていますが、基本的には無症状になります。

胆嚢内のサラサラな胆汁がドロドロな泥状になっている状態を指しています。

胆嚢の評価は、超音波検査で行いますので、『正常の胆嚢』と『胆泥症の胆嚢』の画像をご紹介します。

『正常の胆嚢』

『胆泥症の胆嚢』

超音波検査では、液体のものは黒く映りますが、ドロドロしたものは白く映ります。

当院では、胆泥症を病気の状態とは考えておらず、

病気の前駆段階(将来的に注意が必要)と考えております。

『高齢に伴う基礎代謝の低下』、『食生活の乱れ』、『運動不足』などが原因と考えておりますので、

生活習慣病の1つと考えております。

胆泥症の発生要因

胆嚢の収縮性の低下が1番の原因になります。

収縮性が低下する要因として、以下のものがございます。

1、年齢(基礎代謝の低下)

2、高脂血症(中性脂肪やコレステロールが高い状態で、食生活の乱れ)

3、ホルモン性疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能更新症)

4、基礎疾患(慢性腎臓病、慢性肝炎、慢性腸炎など)

5、胆嚢炎や胆嚢腫瘍の存在

胆嚢の収縮性

胆嚢は、空腹時は大きくなり、消化酵素である胆汁を溜め、食後に胆汁を排出し小さくなる袋になります。

この収縮性が低下することで、

胆嚢内の胆汁が溜まりやすくなり、古い胆汁が蓄積しドロドロになってきます。

そのため、胆嚢の収縮性を整えることが、治療での大切なポイントになります。

胆泥症の治療

治療は主に3つのポイントから実施しています。

1、胆嚢の収縮性を促進する:当院では、ウルソデオキシコール酸(ウルソ)を推奨しています。

その他、胃腸の運動性を高め、胆汁排出を促すガスモチンやプリンペランの推奨もしています。

2、消化しやすいご飯や低脂肪のご飯

胃腸の負担を軽減することが、胆汁の排出を促しますので、消化器ケア食や低脂肪食を推奨しています。

3、基礎疾患の治療

甲状腺機能低下症をはじめとする、基礎代謝が低下する疾患の治療を併用して行います。

まとめ

胆泥症は、病気の前駆段階になりますので、無症状であることがほとんどです。

そのため、体調不良時の検査で偶発的に発見されることや健康診断での発見が多いです。

8歳以上の高齢犬での罹患率が高くなっていますので、定期的な健康診断をご検討ください。

*当院では、春のフィラリア検査シーズンに血液の健康診断を実施していますので、ぜひご活用ください。

早期発見、早期体質改善が、とても大切ですので、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

アリイ動物病院 院長